インドネシア 2015
8
バリ島編 その5
ウブドの光と風
とうとう最終日だ。今夜、成田行きの飛行機でバリ島を発つ。
といっても帰国便の出発時間は明日の午前零時だから、丸一日の猶予がある。

でも、今日は何も予定を決めていなかった。
せっかくアグン・ラカのようなところへ泊まるのに、朝と夜だけしかいないのはあまりに勿体ない気がした。ここでのんびり過ごす一日があってもいいと思った。
だから、別料金はかかるが、レイトチェックアウトを申し込んでおいた。コテージには夜6時までいられることになっている。

今日は一日どこへも出かけず、バレ・ブゴンでゴロゴロしたり、ホテルの広い敷地をうろついたりすることにしよう。

コテージの1階にある浴室とトイレは半分屋外だ。

夜空を見上げながら浴びるシャワーは最高の解放感だった。

2階の寝室へは、梯子と呼びたいくらいの急な階段を上る。夜、下りる時が転げ落ちそうで少し怖い。

バレ・ブゴンで、とりあえずクッションにもたれて寝そべる。何もしなくていいのに、何をしようかとつい考えてしまう。

壁と簾で切り取られた庭の眺めは一幅の絵のよう。

日差しが強くなっていく。草や木々の葉が光を浴びて輝く。

あまりの明暗差に、日陰が夜のように見える。

葉陰にいても太陽の熱が伝わってくる。

何もしていない割には時間が早く流れる気がする。

昼食の時間になったので、外へ出ることにした。
ハノマン通り Jl.Hanoman
適当なレストランを探しながら、ハノマン通りをあてどもなく歩く。

ちょうど何か祭りでもあったのだろうか。通りの至る所に飾付けや供え物があった。
バリ島ではどんな小さな集落にも最低3つは寺院があり、バリ島の暦で年に一度の創立記念祭が寺院ごとに執り行われる。そういう事情もあって、毎月1回以上は必ず何らかの祭りがあるという。
そして、祭りがあれば、その度に寺院へ供え物をし、家や周囲の飾付けをしなければならず、もし、それらをおろそかにするようなことがあれば、非難の目を向けられるという。
楽園の住人は旅行に行く暇もないくらい忙しいらしい。

日差しが照りつける通りは通行人もまばらだ。

入ってみたいと思う店がなかなかなくて、結局、ハノマン通りが合流するラヤ・ウブド通りまで来てしまった。王宮があるウブドの目抜き通りだ。
ノマドというレストランに決めてようやくランチにありつく。
甘いフレッシュ・ジュースが乾いた喉と疲れた体にしみこんでゆく。
窓側の席で人や車の往来をぼんやりと眺めていた。

レストランを出た後は来た道をただ引き返す。

すぐ近くでリンディックの音色が聞こえた。しかし、楽器の演奏をしているような家は通り沿いに見当たらない。
不思議に思って音が聞こえてくる方向をたどると、それは屋根の上にあった。
リンディックだと思った音の正体は、風車で音が鳴る仕組みの竹風鈴だった。いくら音色が心地良くても、風が吹く間ずっと鳴りっぱなしでは近所迷惑にならないのだろうか。
通り過ぎた後も竹風鈴の奏でる軽やかな音色がしばらく聞こえた。
旅の終わり
アグン・ラカのコテージに戻ると、残りの時間もバレ・ブゴンで過ごした。
日陰で寝そべっていてもやや暑さを感じる。
チェックアウトの時間がゆっくりと迫る。

送迎の車は8時に来る。チェックアウトを済ませると、フロントで荷物を預かってもらい、夕食に出かけた。
入ったのは近くにあったカフェ・アルマというレストラン。落ち着ける雰囲気で、味付けも垢ぬけている。
黄昏を過ぎて、通りの景色はすっかり暗闇に沈んだ。ウブドはこの夜の暗さをいつまでも守ってほしい。

その後、ラウン山の新たな噴火はなかった。帰国は予定どおりだ。
《 インドネシア 2015 完 》