旅の空

インドネシア 2015

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ジャワ島編その1 ボロブドゥール寺院群

朝焼けのボロブドゥール  Borobudur

マノハラ・ホテルのベッド脇に置いた目覚まし時計が鳴ったのはまだ夜も明けきらぬ午前4時。インドネシアでの最初の予定が「ボロブドゥール・サンライズ・ツアー」であった。まだ暗いうちにボロブドゥール遺跡の頂上へ上り、そこで日の出を見ようという企画である。

大渋滞のせいでここへ着いたのは今日の午前零時過ぎ、床についたのは1時過ぎだった。サンライズ・ツアーに申し込んだことを少し後悔した。日の出を拝むにしても、まず昼間の太陽で遺跡を見てからにすればよかったと思った。

ロビーでガイドのブディーさんと落ち合い、マノハラ・ホテルを出る。遺跡内といってもよい至近距離にこのホテルはあるらしいが、暗くて周りに何があるのか全く見えない。しかし、台形をした巨大建造物の輪郭が前方のまだ暗い空に浮かんでいる。

入場口を抜け、段が狭い上にかなり急角度の階段を上る。遺跡の全貌を見る前にいきなり上に行ってしまうのは抵抗感がある。しかし、最上段にはすでに大勢の観光客が来ていて、めいめい眺めの良さそうな場所に陣取ってシャッター・チャンスを待っている。

日の出が近づくにつれ、空は薄茜色に染まる。ボロブドゥール遺跡の周囲に広がる見渡す限りの森には朝靄が立ち込めている。

ボロブドゥール | Borobudur
マノハラ・ホテル  Hotel Manohara

地平線から太陽が現れたのは午前6時10分頃だったか。そのまま遺跡を見て回りたい気もしたが、ボロブドゥールを後にして一旦、ホテルに戻る。何より、朝食を早くとりたかった。

マノハラ・ホテル | Manohara Hotelマノハラ・ホテル | Manohara Hotel

元々、ボロブドゥール遺跡の研修センターであった施設を改装してできたのがマノハラ・ホテルということだ。道理で、これだけ遺跡に近いというか、遺跡内にあるわけだ。部屋の造りは簡素だが、ここの場合はむしろそれが良い。豪華さはなくても、必要なものは全て揃っていて快適だし、伝統建築を採り入れたデザインは非常にセンスが良い。できれば2泊以上したかったところだ。

ボロブドゥール その2  Borobudur

マノハラ・ホテルで朝食を済ませた後に再びボロブドゥール遺跡へ向かう。

ボロブドゥールは、8世紀から9世紀にかけてこの地を支配したシャイレーンドラ王朝が建造した仏教遺跡だという。一辺が約120メートルの基壇に5層の方形と3層の円形の壇を重ねた遺跡の高さはおよそ33メートル、表層は石造りだが、その下は盛土らしい。

実は、東南アジアの歴史や文化に関して何の予備知識も持たないまま来てしまった。でも、ボロブドゥールの場合、特にそういうものは必要ない気がする。この存在感だけで見る者を圧倒する。

ボロブドゥール | Borobudur

朝方も通ったばかりの正面階段に回って目を疑った。サンライズ・ツアーの時も時間が早い割に人が多いとは思ったのだが、そのときとは比較にならないほど、遺跡は人であふれかえっていた。ラマダン明けはイスラム教徒の行楽シーズンということはわかっていたが、これほどまでとは思わなかった。おそらく、インドネシア経済の発展とジャワ島の人口が多いことが関係しているのだろう。

ボロブドゥール | Borobudurボロブドゥール | Borobudur

遺跡の規模もさることながら、ボロブドゥールで圧倒されるのは彫像やレリーフの見事さである。しかも、5層ある方形壇の回廊壁面がびっしりとレリーフで埋め尽くされている。その数たるや、2,500を超えるという。到底、一日で見切れるものではない。写真を撮りながら全部見ていったとしたら、一週間くらいかかるのではないだろうか。

ボロブドゥール | Borobudurボロブドゥール | Borobudur
ボロブドゥール | Borobudur

ボロブドゥールには全部で500体を超える仏像があるという。中でも3層の円形壇上には釣鐘の形をしたストゥーパが72基あり、その内部には全て等身大の仏像が1体ずつ納められている。

ボロブドゥール | Borobudurボロブドゥール | Borobudur

ボロブドゥールの観光に半日では全く時間が足りない。大誤算だった。

パウォン寺院  Candi Pawon

ボロブドゥールとともにボロブドゥール寺院群を構成する寺院が2つある。その一つが、ボロブドゥールから約1.6キロ東に位置するパウォン寺院だ。ボロブドゥールと同時期の建造とされる。

パウォン寺院 | Candi Pawonパウォン寺院 | Candi Pawon

ボロブドゥールとは対照的な、何とも小ぢんまりとした寺院であるが、外壁に見事なレリーフが刻まれている。

寺院の内部には何も残っていないが、シャイレーンドラ王朝の王族の遺灰を納めた霊廟だったらしい。

パウォン寺院 | Candi Pawon
ムンドゥッ寺院  Candi Mendut

パウォン寺院からさらに約1.2キロ東にあるのが、ボロブドゥール寺院群を構成するもう一つの寺院、ムンドゥッである。同じくシャイレーンドラ王朝時代の創建とされる。パウォン寺院は、ボロブドゥールとこのムンドゥッ寺院を結んだ一直線上にあり、これら3寺院の関係性を強く示している。

ムンドゥッ寺院 | Candi Mendutムンドゥッ寺院 | Candi Mendut

敷地の一角に大きなガジュマルの木があり、寺院の佇まいに趣を添えている。

ムンドゥッ寺院 | Candi Mendutムンドゥッ寺院 | Candi Mendut

この寺院の内部には三体の石仏が残っている。中央に釈迦如来像とその両脇に二体の菩薩像である。釈迦如来像は高さが約3メートルあり、ここまで大きな仏像は他の遺跡では見られないという。

ムンドゥッ寺院 | Candi Mendutムンドゥッ寺院 | Candi Mendut

見事な持ち送りアーチ構造の天井も必見である。

タマン・サリ(水の離宮)  Taman Sari

ジョグジャカルタ市中心部へ戻って来た。

ボロブドゥール寺院群から時代はかなり下るが、18世紀に建造されたスルタンの離宮、タマン・サリを訪ねた。

タマン・サリ | Taman Sariタマン・サリ | Taman Sari

大きな水浴場で王宮に使える女性たちに水浴びをさせ、スルタンは塔の三階にいてその様子を眺めながら、好みの女性を召したという。いつの世も権力者のすることは…

タマン・サリ | Taman Sariタマン・サリ | Taman Sari
マリオボロ通り  Jalan Malioboro

ホテルへ向かう前に、ジョグジャカルタでは定番の観光スポットであるマリオボロ通りをガイドの案内で少し散策する。強烈に印象に残っているのは、やはりバイクの多さである。歩道はどこもかしこも駐輪場のような状態で、歩行者の通路をわずかに残してバイクがびっしりと並んでいる。

マリオボロ通り | Jalan Malioboroホテル・テントレム・ジョグジャカルタ | Hotel Tentrem Yogyakarta

ジョグジャカルタ2日目の宿泊先は、テントレムというホテルだった。思いがけない高級ホテルだった上に、部屋も無料のアップグレードになっていた。あまりの広さを持て余す。