インドネシア 2015
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ジャワ島編その2
プランバナンと周辺の寺院遺跡群
サンビサリ寺院 Candi Sambisari
ジャワ島の二日目に、有名なプランバナン寺院群とその周辺にあるヒンズー教、仏教寺院群を訪ねた。
ボロブドゥールを建造したシャイレーンドラ王朝は仏教国であったが、同じ時代にヒンズー教を崇める古マタラム王国が、ボロブドゥールからさほど離れていないこの地域で共存していたらしい。
サンビサリは、古マタラム王国が9世紀頃に建造したヒンズー寺院である。


わざわざ地面を掘って低い場所に造られたように見えるが、これは、寺院建立後に起きたムラピ山の噴火によって一帯に火山灰が降り積もったことによるものだ。今から50年前、土地を開墾しようとした農民がこの寺院を発見したという。遺跡は地下6.5メートルの深さに埋もれていた。


サンビサリは、ヒンズー教のシヴァ神を祀る寺院であり、外壁には妻のドゥルガー、息子のガネーシャのレリーフがある。ちなみに、ガネーシャが象の頭を持つのには恐ろしいいわれがある。あるとき、シヴァ神は、自分の息子とは知らずにガネーシャの首を刎ねてしまい、切り落とした頭を探したが見つからなかったため、代わりに象の頭を息子の体に付けというのだ。


寺院内部にはリンガ(男性器)とヨニ(女性器)を象った大きな石像がある。ヒンズー教では古くから生殖器崇拝があり、これらの彫像はシヴァ神の象徴とされる。
それはそうと、レリーフの装飾文様が、中米のマヤやアステカ遺跡のものにどこか似ている気がしてならない。


プラオサン寺院 Candi Plaosan
入場口からの眺めはまさに圧巻だった。夥しい数の石材が広大な敷地を埋め尽くしている。高さ20メートルほどの2つの堂を取り囲むようにして、数えきれないほど多くの小祠や仏塔がかつて林立していた様子が想像できる。



プラオサンは、仏教を信奉するシャイレーンドラ王朝からヒンズー教を信奉する古マタラム王国へ嫁いできた王妃のため、9世紀に建造された仏教寺院だという。


寺院の内部には、もともと3部屋に3体ずつの仏像があったらしいが、どの部屋も真ん中の御本尊だけがなくなっている。脇侍が両方残っているのに、御本尊だけ跡形もなくなっているというのが不思議だ。


外壁全面に見事なリーフが施されている。


正面の参道入口には守護神であるクベラの像が向かい合って立つ。見ると、片方は口をわずかに開き、もう片方は固く閉じている。仁王像の阿形吽形と同じだ。


幹線道路まで行くと遠回りになるからか、車は、集落の中を通るような道を多く走った。道の両側には民家が迫っていて、農村の日常生活が垣間見える。家事をしていたり、子供が遊んでいたり、鶏がうろついていたり。道の両端には村人がいて、そこを通る車から料金を徴収していた。
プランバナン寺院群 Candi Prambanan
プランバナンは、9世紀から10世紀頃にかけて古マタラム王国が建造したヒンズー教寺院群である。

ブラフマ―(創造)、シヴァ(破壊)、ヴィシュヌ(維持)の三最高神と三神の乗り物とされるハンサ(白鳥)、ナンディン(牛)、ガルーダ(神鳥)を祀った寺院など8つの巨大な石造建築が居並ぶ様は圧巻というほかない。

中でも、別名ロロ・ジョングランとも呼ばれるシヴァ寺院の規模は群を抜いており、47メートルもの高さがある。


三神を祀った寺院の中心にシヴァがいて、それが際立って大きいのは、三神の中でもシヴァ神の人気が高いことの表れだろう。


圧倒されるのは大きさだけではない。まるで異次元のようなこの造形感覚はどうであろうか。

ボロブドゥールと並ぶ観光名所とあって、それに引けを取らない混みようであった。狭い寺院内では、ほとんど身動きがとれなくなる。シヴァ寺院に入場するのはあきらめた。

セウ寺院 Candi Sewu
「セウ」は数字の千を意味する。「千の寺院」という名のとおり、28メートルの高さを誇る主祠堂の周囲を249基もの小祠堂(ペルワラ)の遺構が取り囲む。仏教寺院ではボロブドゥールに次ぐ規模だという。
参道入口には一対のクベラ神像が門番として向かい合っている。


8世紀から9世紀にかけて、古マタラム王国によって建造された仏教寺院だという。ヒンズー教を信奉する古マタラム王国がわざわざ仏教寺院を建てた背景には、ボロブドゥールを造ったシャイレーンドラ王朝の存在がある。古マタラム王国は一時期、シャイレーンドラ王朝と臣従関係にあったようだ。


セウ寺院の造形感覚は他の寺院とどこか違うと思った。パリのサクレ・クール寺院を彷彿とさせる形ではないだろうか。


均整のとれた美しい主祠堂を何度も振り返りながら、夕日でうっすらと橙色に染まる寺院を後にした。二日間に訪ねた寺院で最も印象に残っているのは、実はこのセウ寺院である。

ボコの丘 Kraton Ratu Boko
ジョグジャカルタの最後に訪ねたのは、古マタラム王国の宮殿遺構が残るボコの丘。小高い丘の上にあって、プランバナン寺院群を眼下に見渡せる好展望地であり、夕日の名所でもある。


青空の下、広々とした遺跡公園を散策するのも気持ち良さそうだ。
バリ島へ
午後8時30分発のGA254便でジョグジャカルタを発つ。空港へ向かう前に、夕食のレストランへ案内された。 もうすっかり暗くなっていたので景色は見えなかったが、周囲は田畑が広がっているらしい。
屋上の席に涼しい夜風が吹き抜ける。頭上ではコウモリが音を立てずに飛び回っていた。ジャワ島滞在の最後に食べたこのレストランの料理が一番美味しかった。
ジョグジャカルタ空港の搭乗待合室に入って唖然とした。通路にまで人があふれているのである。当然、ベンチに空きは一つもなかった。しばらく売店巡りをした後は、仕方なく、搭乗開始まで立ちっぱなしで時間をやり過ごす。利用客の数に対して空港の容量不足は明らかだが、新ターミナルを建設する予定があるらしい。