旅の空

ヨルダン 2012

3

薔薇色の古代都市・ペトラ その1

ペトラ  Petra

ペトラとは、紀元前6世紀にアラビア半島から移住したナバテア人が、岩山を削って築いたナバテア王国の都である。元々、遊牧民であったナバテア人は、シルクロードの要衝であるこのペトラを拠点にして隊商交易に従事し、大いに栄えたという。

このナバテア人というのが、どうも掴みどころのない民族である。アラビア半島が起源で、ナバテア語というアラビア語の近縁言語を話したというから、アラブ人やベドウィンの先祖なのかと思ってガイドに聞いてみたのだが、直接の繋がりはないようだった。

ナバテア人はドゥシャラという神を信仰していたが、文化的にはヘレニズムの影響を受けている。また、ローマの支配を受けたこともあって、ペトラにはギリシア、ローマ風の建造物が多く見られるのである。

【ペトラ参道】
ペトラ:ドゥシャラ神祭壇

ホテルを出たのは朝8時、今日は丸一日、ペトラ観光だ。ホテル脇の遺跡入場門を抜けると見えてくる四角い形をした奇妙な岩は、ナバテア人が崇めたドゥシャラ神の祭壇である。この岩にドゥシャラ神の霊が宿るという。

【オベリスクの墓】
ペトラ:オベリスクの墓 | Obelisk Tomb, Petra

エジプト文化の影響を示す造形である。四角錐の4本の柱が墓で、その下が葬儀などの儀式を執り行う祭壇らしい。

【シーク入口】
ペトラ:シーク入口

ペトラ遺跡に通じる全長1.5キロの隘路をシークという。高さ100メートルの岩山が水の浸食作用によって削られた峡谷だ。

【シーク】
ペトラ:シーク | Siq, Petra

断崖絶壁が両側に切り立つシークを歩いていると、まるで地の底にいるような気分になる。左側の岩壁には溝を彫って灌漑用水路を通している。

【エル・ハズネ】
ペトラ:エル・ハズネ | El Khazneh, Petra

そして、岩の切れ間からいよいよ「エル・ハズネ」が姿を見せる。ペトラ観光ではお約束の光景である。

ペトラ:エル・ハズネ | El Khazneh, Petra

高さ37メートル、幅は27メートル。エル・ハズネとは宝物殿を意味する。かつて、建物の壺状の装飾の中に宝物があると信じられたことからこの名で呼ばれるが、紀元前1世紀から紀元2世紀の間に建造されたナバテア王の岩窟墓と考えられている。

ペトラ:エル・ハズネ | El Khazneh, Petra

しかし、映画『インディ・ジョーンズ』のロケ地となったことで有名なこのエル・ハズネでさえ序の口に過ぎない。ペトラが本当に凄いのはここから先だ。

【ネクロポリス】
ペトラ:岩窟墳墓群

貴族の墓。裕福な家庭は個人墳墓なのだという。軒部分にある4段の階段装飾はペルセポリスにもよく似たものがある。関連があるだろうか。

ペトラ:岩窟墳墓群

市民の共同墓地。貧しい家庭は家族墳墓なのだとか。

ペトラ:岩窟墳墓群

携帯温湿度計で確かめたところ、この時の気温40度、湿度は25%であった。気温は高くても湿度が低いので楽勝である。

【柱廊通り】
ペトラ:柱廊通り | Colonnaded Street, Petra

道幅が6メートルもある大通り。この柱廊通り一帯こそがペトラのハイライトだ。

ペトラ:柱廊通り | Colonnaded Street, Petra

しかし、ここから1時間ほど山道を登ったところにある「エド・ディル」へ足を伸ばすことにしているため、今は柱廊通りを通過する。ハイライトは、エド・ディルから戻って来た後にたっぷりとある自由時間にとっておく。

【凱旋門】
ペトラ:凱旋門 | Triumphal Arch, Petra

ローマ式の3つのアーチを備えた門。

【カスル・アル・ビント】
ペトラ:カスル・アル・ビント | Qasr Al-Bint, Petra

カスル・アル・ビントとは、「ファラオの娘のための宮殿」という意味だそうだが、実際は、紀元前1世紀にナバテア人が建てたドゥシャラ神殿ということだ。

【エド・ディル参道 行き】
ペトラ:エド・ディル参道

カスル・アル・ビントのすぐ近くにあるレストランを通り過ぎ、「エド・ディル」を目指して山道をひたすら上る。

ペトラ:ライオンの墓 | Lion Tomb, Petra

入口の壁の両側に一対のライオンの浮彫があることから「ライオンの墓」と呼ばれる岩窟墓が途中にある。

ペトラ:エド・ディル参道

ベドウィンの人たちが道中の至る所で土産物などを売っていた。

【エド・ディル】
ペトラ:エド・ディル | Ed Deir, Petra

およそ1時間歩いてようやく山の頂に出た。エド・ディルは、高さ45メートル、幅50メートル、紀元1世紀に造られたナバテア人の葬祭殿である。ディルとは修道院を意味する。4世紀に修道院として利用されていたことからこの名が付いたようだ。

ペトラ:エド・ディル | Ed Deir, Petra

エル・ハズネよりも大きいペトラ最大の建造物である。この大きさ、高さの建造物を岩山から削り出す労力を思うと気が遠くなりそうだ。
恐ろしいことに、神殿の壁を素手でよじ登った挙句、屋根から屋根へと飛び移る命知らずなベドウィンの少年がいた。エド・ディルを見に来た観光客の視線は遺跡よりもその少年に集中している。いいところを見せたいのだろう。しかし、遺跡内を巡回している警察官に見つかれば大目玉を食うのはおそらく必至である。

アラバ渓谷