旅の空

イランの旅 2007

アリー・サドゥル、ハメダーン

到着

体調を崩したせいで、非常につらいフライトとなった。長い苦痛な時間をどうにかやり過ごし、メヘラバード空港に着いたのが朝の6時くらい。気がつくといつの間にか着陸していた。相変わらず、イラン航空のパイロットの腕は見事だと思う。機内から拍手が起こる。
入国審査を待つ間、眠気とだるさでまっすぐ立っているのがやっとだった。飛行機がこれほど遅れなければ、一晩、ホテルのベッドで眠れたはずなのに。
空港の到着案内を見て、どうやら遅れたのは東京便だけではないことがわかった。経済制裁で、イランは、新しい航空機や部品を思うように調達できず、古い機材をなんとかやり繰りしていると聞く。たった1機の故障が他の便にも多大な影響を及ぼすのだ。
機内預け荷物を受け取り、セキュリティチェックを通ると、もう入国ゲートだ。今回は入国カードもない。こんなに簡単だったか?と思う。

ガイド・レザー氏

ゲートの先に、僕の名前を書いて立っている中年のイラン人男性がいた。日本語ガイド兼ドライバーのレザーさんだ。空港を出ると、懐かしい熱い空気に包まれた。でも、だるいし、頭はぼんやりするしで3年ぶりの感慨にふける余裕はなかった。レザーさんの年代物の白いベンツに乗り込む。
体調は最悪だし、機内でほとんど寝られなかったので、レザーさんの家で少し休ませてもらうことにした。シャワーを借り、身支度を整えた後で、ナン、目玉焼き、バラのジャムのジュース、チャイの朝食をいただいた。食後、たまらず部屋で横にならせてもらう。いつの間にかぐっすり眠っていた。
目覚めたのは午前9時40分、出発しなければ。しかし、頭痛がして頭もぼんやりして、とてもこれから旅に出る状態とは思えなかった。このままずっと寝ていたいが、今日中にハメダーンに移動しなければならない。毎日、西へ北へと移動する日程を組んでしまったのである。
体に鞭打ってやっとの思いで車に乗り込んだ。ずっと楽しみにしていた旅行なのに、意欲が全くわいてこない。一体、自分はイランへ何をしに来たのだろうと思った。

果樹園

ハメダーンへ向かう前に、レザーさんが所有する果樹園へ案内してくれた。彼の副業だという。園丁まで雇っていて、奥さん、子供2人と暮らしていた。ここで御馳走になったブドウは甘くて濃い味で非常においしかった。不思議なもので、このブドウを食べたら元気が出てきたような気がする。
予定では、ハメダーンに行く途中で、イランで人気の高い観光地、アリー・サドゥル洞窟へ寄ることにしていた。出発した時には、アリー・サドゥルどころの気分でなく、ハメダーンのホテルに直行して休むつもりでいた。でも、しばらく車で走っているうちに、少しずつだが、体調が戻ってくるのを感じた。行けそうな気がしてきた。

ハイウェイ

ハメダーンへ向かう高速道路に乗った。イランでも前の年からシートベルト着用が義務化されたという。この日は、近隣の警察官が集結したかと思うくらい、道路のほとんど一定間隔にパトカーがいてスピード違反などの取り締まりをしていた。
料金所の建物がいかにもイランらしい。
Kamarband-e imani ra bebandidイランの高速道路イランの料金所

途中の風景1

果物を満載して道端に止まっているトラックをあちこちで見かける。メロンを丸々1個買った。

途中の風景2

テヘランからハメダーンにかけての地域は、肥沃そうな大地がどこまでも続いていた。ファールスやヤズドなどの風景とはなんという違いだろう。

アリー・サドゥル洞窟   Ghar-e 'Ali Sadr

ハマダーンへ行く途中の寄り道のつもりでいたが、幹線道路からアリー・サドゥルへは思った以上に遠かった。到着したときにはもう午後4時をまわっていたが、夏のイランは7時を過ぎてようやく日が沈む。まだ日は高かった。
洞窟のまわりは遊園地のようになっていて、多くの家族連れで賑わう。
アリー・サドゥル洞窟Ghar-e 'Ali Sadrアリー・サドゥル洞窟
洞窟入口には大きなビジターセンターがあった。洞窟の中は半袖一枚では寒いくらいだ。羽織るものを車に置いてきて後悔した。鍾乳洞は日本でもいくつか見たが、ここは、ボートに乗って見物するのが売りである。ツーリスト(外国人)料金は、イラン人料金よりも何倍か高いようだ。レザーさんは観光ガイド証とツーリストチケットをかざして、狭い通路内にひしめく順番待ちのイラン人観光客をかき分けて行列の先頭へと進んでいった。
たしかに見事な鍾乳洞である。足こぎボートを先頭に3艘のボートを数珠つなぎにして広い鍾乳洞内を進む。水は、落ちたら心臓マヒを起こしそうなほど冷たい。
鍾乳洞の奥へ漕ぎ進んでゆくと、イラン人客で満員のボートと何艘もすれ違う。写真やビデオを撮ったり、歌を歌ったりと賑やかだ。所々にある狭い水路を、ボートは岩にゴツゴツと体当たりしながら進む。鍾乳洞の岩は貴重なものではないのだろうか。
アリー・サドゥル洞窟Ghar-e 'Ali Sadrアリー・サドゥル洞窟

洞窟を出た。メロンを切るためのナイフを探して土産物バザールを歩く。日本の遊園地で見かけるような乗り物がここにもある。乗り物で夢中になって遊ぶ子供とそれを外で見守る親。どんな国でも変わらない光景である。
アリー・サドゥルアリー・サドゥルアリー・サドゥル
途中で買ったメロンを車の外で食べた。甘くて濃いが、クセのない味だ。ことメロンに関しては、日本よりもイランの方が美味しいと思う。

ハメダーンへ

夕日アリー・サドゥルからハメダーンへの道のりもまた実際の距離以上に長く感じられた。イランに着いたのは今日の朝だということが信じられない気がする。遠くの空に沈む夕日を眺めながら、なんと長い一日だったかとしみじみ思った。
ハメダーンの街に入った頃にはすっかり暗くなっていた。暗いので街の様子はよくわからなかったが、ロータリーに出た。例によって、どの車も我先に突っ込んでくる。あやうく衝突しそうになったレザーさんが、「この街の人は運転が下手だし乱暴だ」と言った。テヘランっ子が乱暴だというくらいだから、ハメダーン人の運転マナーは、もはや日本人の想像を超えるレベルだ。
途中、道を尋ねながらホテルに着いた。高級ホテルなのが余計にありがたい。一刻も早く休みたかったので、夕食は手っ取り早くホテルのガーデンレストランで済ませた。台湾人の団体旅行客がいた。