旅の空

イランの旅 2007

ザンジャーン、ソルターニーエ

ザンジャーン  Zanjan

ホテル近くの公園に行ってみる。今日は金曜日、この国では休日だ。朝からもうピクニックが始まっている。一緒に朝食を食べませんか、と手招きしてくれる人もいる。歓迎の挨拶である。こういう場合、一旦は有難く辞退するのがマナーだとか。辞退してもなお強く勧められるようならそれは社交辞令でないということ。あいにく、こちらも朝食を済ませた後だったが。
ザンジャーンZanjanザンジャーン

ラフトシューイ・ハーネ  Rakhtshuy-khane

ラフトシューイ・ハーネは昔の公衆洗濯場で、現在は、ザンジャーン博物館とも呼ばれる。古代遺跡のようでもあり、古いモスクのようでもある不思議な地下空間だ。当時の衣装をつけた女性のマネキン人形が置いてある。薄暗い中では、人形なのかチャドルを被った本物の女性なのか、見分けがつきにくかったりする。中庭の雰囲気も良く、ザンジャーンを訪れたなら、一見の価値があると思う。
ラフトシューイ・ハーネ(ザンジャーン博物館)Rakhtshuy-khaneラフトシューイ・ハーネ(ザンジャーン博物館)

ソルターニーエ  Soltanie

今日は、ザンジャーンからは車で約40分ほどの町、ソルターニーエに向かう。イランは、13世紀から14世紀にかけて、モンゴル(イル・ハーン朝)の支配を受けた。ソルターニーエには、そのモンゴル支配時代の建造物が残る。
今日の行先はここだけ、今回の旅で初の連泊である。連日の長距離移動も中休みなので、気分的なゆとりが全然違う。

チャラピ・オグリの廟  Gonbad-e Chalapi Oqli

ソルターニーエで最初に訪れたのが、チャラピ・オグリの廟だ。ふとしたことからネットで写真を見てこの廟を知ったのだが、そのときは、ザンジャーン州のどこかにあるということしかわからなかった。それが、この朝、パールク・ホテルのフロントに貼ってあった州の観光ポスターにこの廟の写真があるのを見つけて、聞いてみたら、ソルターニーエにあることがわかったのだ。
チャルビ・オグリ、チェレビ・オグルなどと表記が何通りかあるが、ここではイラン観光協会の表記に従う。いずれにせよ、イラン人の名前とは思えない。やはりモンゴル関係者だろう。
思いのほか素晴らしい建物だった。きれいに修復・整備されている。チャルビ・オグリがどういう人物なのかはわからなかったが、建物の規模や造りを見れば、かなりの重要人物だったと思われる。
テヘランから2泊3日の小旅行に来たという女性2人組に会って、しばらく立ち話をした。
チャラピ・オグリの廟Gonbad-e Chalapi Oqliチャラピ・オグリの廟

モッラー・ハサン・カーシーの廟  Boq'e-ye Molla Hasan Kashi

カーシーとは、イラン中部にあるオアシス都市、カーシャーンの出身を意味するという。優美な形をした廟であるが、建物の維持、補修に手が回っていない印象を受けた。日干しレンガ積みの壁のあちこちに亀裂が入り、ところどころ天井の漆喰が落ちており、入口の扉のガラスが割れている。早急に修復が必要だろう。
かつては廟をぐるりと囲んでいたであろう塀は跡かたもなく、周囲はただ、荒れ野原が広がるばかり。砂利を敷いた参道が設けてあって、道の両側には電灯を立てるつもりらしいが、穴は掘ったまま、コードは置きっぱなしであった。(以上、2007年訪問時)
思うに、修復予算がほとんどゴンバデ・ソルターニーエにとられてしまっているのではないか。
周りが荒れ野原であっても、この廟は充分美しい。でも、まわりに木や花を植えて整備したら、きっと見違えるだろう。
モッラー・ハサン・カーシーの廟Bogh'e-ye Molla Hasan Kashiモッラー・ハサン・カーシーの廟

ゴンバデ・ソルターニーエ  Gonbad-e Soltanie

いよいよ、最大の見どころ、ゴンバデ・ソルターニーエへ。イル・ハーン朝の君主、ウルジャーイトゥーの廟だという。近づくにつれ、その大きさを実感する。レンガ造りとしては、世界一の高さだという。世界遺産登録もうなずける堂々たる建造物である。
壁や天井の装飾が、エスファハーンなど今までイランで見てきたものと違って、色調を抑えた非常に渋い趣向だ。違う次元でこちらも素晴らしいと思う。2階テラスからの眺めも良い。
ゴンバデ・ソルターニーエGonbad-e Soltanieゴンバデ・ソルターニーエ
トイレの手洗い水の冷たさに驚く。真夏のイランだというのに、ここソルターニーエは、日向にいても全く暑さを感じない。上高地か軽井沢にでもいるような爽やかさだ。
Gonbad-e Soltanieゴンバデ・ソルターニーエSoltanie
帰りに売店で絵葉書を買おうとしたら、店番が昼食に出てしまっていた。ソルターニーエの絵葉書とは、イラン土産としても希少品である。是非とも買って帰りたかった。近くに座って店番の帰りを待つことにした。待っている間、アルダビールから来たという家族連れと英語で話をした。たしか、ケゼラーラー(鱒)の養殖をしていると言っていた。アルダビールにも招待されたが、残念ながら、アルダビールで全然、時間がとれそうにない。

店番は2時になっても帰ってこなかった。こちらも座ってのんびり話し込んでいたので、1時間くらい経っていたかもしれない。すると、売店の向かいにいた入場券係が、絵葉書なら1セット持っていると教えてくれた。それをもっと早く言って欲しかった。

ザンジャーン散策

ソルターニーエでゆっくり過ごした後、3時近くに遅い昼食を済ませ、ザンジャーンに帰ってきたのは4時過ぎだった。ホテルで一休みして、5時からレザーさんとザンジャーンの町歩きをする。
ザンジャーンは刃物で有名な町だ。目抜き通りには刃物を売る店がたくさん軒を連ねている。ただ、近年、中国製が増えたらしく、Made in Chinaと銘打たれたものが多かった。全て自家生産しているという店で、土産用に小さなナイフを何本か買った。
ザンジャーンZanjanZanjan:Masjed-e Jame
マスジェデ・ジャーメに行ってみる。中庭で、ルーハニー(イスラム法学者)が信者と話し込んでいる。隣では、レザーさんと地元の人が何か会話している。話の中身は全くわからなかったし、気にも留めなかった。ただ、モスクの縁側に腰かけ、二人の声に耳を傾けながら、中庭やそこにたむろする人々をぼんやりと眺めていた。
夕暮れ時の穏やかな時間が流れてゆく。日本を発って以降、移動の連続だったから、こんな過ごし方も悪くないと思った。
しばらくすると、モスクに人が集まり始めた。もうすぐ夕方の金曜礼拝が始まる。礼拝が始まれば、異教徒はここにいられなくなる。帰り際、レザーさんとずっと話し込んでいた男性が、マスジェデ・ジャーメの内部を案内してくれた。
涼しくて心地よいザンジャーンの夕べ、来た道を引き返す。この町がなんだかすっかり気に入ってしまった。